2019年11月17日
随想: 酒田と鶴岡の釣り
庄内と言えば今は2市3町
最上川をはさんで、飽海・田川に分かれています。
両者を代表する港町の酒田、城下町の鶴岡
それぞれ違った発展をした庄内の両雄
釣りの世界も全く違うのであります。
沖釣りや小物釣りは別にして、極大雑把に言うならば
酒田は「最上川と南突堤の釣り」
鶴岡は「磯のハキ(ハケ)の釣り」 と言う事が出来ます。
ハキとは、砂浜における離岸流の様なもので
潮流と波具合によって起こる磯場の払い出し
その流れに撒き餌とエサを乗せて釣るフカセ釣法。
したがってどんな大きな岩であっても
その日の条件によって起こるハキは1本か2本
いろいろとマナーにうるさい鶴岡衆
と思われる方々もいるかと思いますが
それにはそれなりの理由が有って
同行仲間は別として「ハキ1本釣り師一人」 「人の撒き餌で盗み釣りするな」
先客が時間と費用(撒き餌)をかけて作った釣り場に
ヒョイと横から竿を出すのは、誠に無礼千万と言う事になります。
ハキの出来ない所で例え釣れたとしても、再現性に乏しく
それは単なるまぐれと云うもので
大向うを唸らせる腕前とは言えないのであり
鶴岡の釣りというものは、そういうものなのでした。
翻って酒田の釣りはと言いますと
私が高校の頃まで住んでいた町でありますが
その頃の記憶をたどりますと
最上川・南突堤の汽水域に発生する食物連鎖の釣りで
基本的に撒き餌は使わないのであります。
春の雪代によるプランクトン・コアミの大発生に始まり
風物詩の南突堤で行列を作ってのスズキ釣り
春セイゴ~夏の夜の黒鯛~川スズキ~黒くサビた巨大な落ちスズキ
初冬の目が脂で白濁したボラ掛け 等々
鶴岡の様に魚を寄せて釣るのではなく、寄っている所に行って釣る釣り。
酒田の方が釣りとしてはグローバルスタンダードと言いましょうか
釣り場に関する考えはおおらかで
ロッドが触れない範囲に入れば可とする風潮の様に思えます。
酒田は最上川の他に、本港は新井田川の河口
北港は豊川が流れ込んでいる関係からほぼ年中濁っています。
一方鶴岡の磯は、荒れない限り普段は透明で
波の高低によるサラシの出来具合が釣果を大きく左右します。
したがって酒田は濁りを前提とした釣り
鶴岡は波を重視したサラシの釣りと言う事も出来ます。
鶴岡衆が酒田に行って面食らうのは
ストラクチャーのほとんどが人工物で、魚はそれらにタイトに着いているため
磯の様に細仕掛けでは太刀打ち出来ない事。
南突堤の基礎部分に沈んでいるストラクチャー周りに潜むデカイ根魚などは
想定以上の太仕掛けでないと釣り上げるのが困難でしょう。
濁りを伴っているので、竿も糸も太仕掛けで問題なく
一竿満月・・・などと竿の曲がりを楽しむよりは
釣り上げてナンボ、流石商人の街と言ったところではないでしょうか。
私が鶴岡流の釣りを体験し始めたのは
20代後半の事で有りましたが
その深淵なる奥深さに驚くのでありました。
武士の修練として創り上げられた歴史からして
それは単なる魚を釣り上げる技術だけでは無く
「釣り道」として奥義の探求だったのです。
いろいろと釣り具も新しいものが開発されておりますが
新しい釣法には既に太刀打ち出来ない鶴岡流フカセ釣り
しかし、磯釣りに関する基本的部分は変らない様に思います。
ルアー釣りに関しては
過去の名場や手法に拘らなくとも楽しめる新しい世界
撒き餌を使わずとも出来るのが魅力です。
サーフなどは、キス釣り以外は誰もしなかったものですが
道具の進化で出来る様になった新しい分野でしょう。
最近見掛けるのは、撒き餌をしながらワームでアジング
馬鹿らしく見えますが、実際釣果はどうなんでしょうか?
もし倍増なら新釣法として登録決定かも知れませんね。
過去に人とは違う釣り方をして、変人扱いされながらも
新しい釣り方として広まり、遂にはスタンダードになった
と言う話しも有るので、いろいろとやってはみるもんだと思います。
Posted by magoemon at 12:46
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